ZOZODOWN

イラストレーターが絵を交えつつ文を綴るブログです。小まめに更新したい気持ちはあります。

映画「LETO」感想

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7/24公開のLETOを見てきた。

情報を得たのが数か月前で、まだ先だなと思ってたらあっという間に始まっていたという…。以下感想です。


ほぼノンフィクションとのことだけど、その情報を知らずに見た。宣伝でもそこはそんなに推してなかったかな?
モデルとなったKinoに関しては、バンド名は聞いたことあるような…?程度。
T.REXだのボウイだのとグラムロックの面々に惹かれて鑑賞したけど、Kino自体に詳しくなくともその時代のバンドが好きだったら雰囲気を掴める作品だと思う。
部屋の中で煙草をふかしまくって、ギター片手に作曲に没頭する…。
Youtubeなんかにあがってたりする、オールディーズバンドのそんな映像を見てるような陶酔があった。ステージ映像よりも雑然とした生活感があって好きなんだよねえ。
合宿中の写真とか映像大好き!

 

マイク、ナターシャ、ヴィクトルの三角関係が危うくもバランスを保っていたのは、マイクとヴィクトルが他の何よりも愛していたのが音楽であり、ナターシャとヴィクトルがよく似ていたからだと思う。
その均衡が崩れるところを描いてしまうと主題が「恋愛」になってしまうから、最後までそのままでいてくれてよかった。その辺から考えて、この映画の主題は間違いなく「音楽」にあった。
紹介される楽曲と舞台の時代設定より6-8年のギャップがあるのは、ロックが禁止されていたことと関係あるんだろうか。
オリジナル曲(聞いたことはないけどきっとKinoの曲なんだろう)は、イギリス音楽で言うとKINKSとかボブ・ディランを感じたけど、あの世情の中音楽をやるという姿勢はパンクそのものだよね。
ジャケットやアーティスト写真を模写したり歌詞を手書きしたり、ロックに魅せられたばかりの少年少女のような純粋な音楽ファンとしての心が呼び起こされる。
ナターシャがマイクやヴィクトルを愛したのも彼らのそんなところだったんだろうな。
関係ないけど、ヴィクトルの二人称(字幕)が親しくなっても一貫して「あなた」なの、そんなん好きになるじゃん…となった。なるでしょ。

 

唐突に入るアニメ的な演出が好き。自分の作品でもそうだけど、絵と実写の組み合わせ大好き!!!
モノクロの抑圧された現実世界と音楽・芸術のもつ鮮やかな力強さの対比がよかった。
あの語り部の男は何者だろう?自己の解放を促す内面のようでもあって、音楽番組の司会のようでもあった。
毎度付け加える「これはフィクション」というメッセージが、ままならない現実のやるせなさを残す…。
でも、そんな中でそこに近づこうと精一杯もがいた先人たちがロックやパンクを生んだとも言える。
演出として好きな部類だった。
内容は違うけど、「ベルベット・ゴールドマイン」でも唐突なアニメ演出、MVがあったなぁと思い出した。グラムロック繋がりで。あれも演出が好きだった映画。

 

作中で紹介されるバンドは、グラムロックのバンドが特に多かった。モットまでは分かるけどSWEETまで!ファンなので嬉しかったぁ~(数年前の来日公演も行ってアンディと2ショ撮ってもらった)
ファン目線で言うと、マーク・ボランT.REXを分けて考えるの分かるな~。そんなようなセリフがあった。
作中で最初に使われたT.REXの曲がBloken Hearted Bluesなのが良かった。
T.REX時代に関しては派手な曲よりも、少し寂し気な曲の方がマークの内面、ひいては誰にでも共通する孤独や無力感を表しているように感じられて私は好き。
日記や個人的なメモのような演出として出てきたのも合ってた。チョイスが絶妙。
ルーリードは偉そうだよね笑(でもそんなところが好き)

 

テアトル渋谷で見たんだけど作品の系統としてはもっとミニシアター的というか、大きな盛り上りどころがあるわけでなく淡々と日常が綴られる感じ。
モノクロ映像なのも一役買って、何もしたくない夜にぼーっと眺めてたいような映画だった。
タイトルのLETOは「夏」という意味らしく、ソ連からロシアに変わる狭間の「ひと時」を表してるみたい。
当時のソ連の情勢とかよく分かんね!の私は、パンフで有識者のコメントを読んで理解した部分もしばしば。
思いっきり刺さる作品ではないにせよ、オールディーズロックが好きであればあの雰囲気は楽しめるんじゃないかな。

 

内容関係ないけど、ソーシャルディスタンスで一席開けての着席いいなー!狭苦しくないし、隣でゴソゴソ動くのも気にならないし。
映画館行ったのも数か月ぶりだけど、入口に消毒液置いたりと工夫してるんだねえ。
空席を作ってるにせよ、前日予約の時点でほぼ満席だった。
改めて映画館という場所が好きだな。また面白そうなのあったら劇場に見に行こ。