ZOZODOWN

イラストレーターが絵を交えつつ文を綴るブログです。小まめに更新したい気持ちはあります。

映画「おもかげ」感想

おもかげ

2019年製作/129分/PG12/スペイン・フランス合作

幼い息子を失った女性の希望と再生の旅路を描いたミステリードラマ。エレナは元夫と旅行中の6歳の息子から「パパが戻ってこない」という電話を受ける。人気のないフランスの海辺から掛かってきたその電話が、息子の声を聞いた最後だった。10年後、エレナはその海辺のレストランで働いていた。ある日、彼女の前に息子の面影を持つ少年ジャンが現れる。エレナを慕うジャンは彼女のもとを頻繁に訪れるようになるが、2人の関係は周囲に混乱と戸惑いをもたらしていく。(映画.comより)

 

140字でまとめ切れない時しか更新されないブログのお時間です。

先日紹介記事を読んで見たかったやつだ!と思い出し、初日に突発的に見てきた。

金曜夜の映画館より好きな場所なんてある?否ない。

 

迷子になった子供と電話でやりとりするところは、子供がいない自分ですら嫌な緊張感にドキドキしてしまった。

なまじスペイン語がちょっと分かるから多分余計に。電話口の母親の混乱してまくし立てるところとかいろんな意味で恐ろしかった。

まあそりゃそうなるよ…嫌な汗が出たよ…。

 

ジャンと知り合って間もないころから、二人の方向性に「うん?」と感じるところがあって、これどうやってオチつけんの…と心配になった。

上のあらすじもそうだけど、紹介記事でもそこまで「二人の関係」の詳細に触れてなかったと思うんだよね。そこを期待して見にいったわけじゃなかったからア…アラァーー!?となった。

 

ジャンを息子と同一化していた部分はあるんだろうけど、あの映画では長い年月が「息子」を形骸化して行って、その面影を彼に見たんだろうな。

幼少期の息子の姿が映らなかったのも、ジャンと息子の類似を鑑賞者に委ねるだけじゃなくてそういう意図がありそう。

どんな形であれ「息子」という存在はエレナを形作るピースだったように思う。

 あのラストは、「子供を失ったこと」(と、それにより深く傷ついていること)を隠していた彼女が、ジャンに受け入れられたことでやっと一人の人間に戻れたんだろうね。

どこまでそのことを知ってるのかは述べられなかったけど、知っていた以上 彼は「自分は息子じゃない」と確信があるんだろうし、物語の中で恋愛対象として存在することで「そんな奇跡が起きるはずない」と良くも悪くも現実を突きつけるようだった。

 

最終的に二人の関係をそこに位置付けることで、エレナは「息子を失ったこと」に囚われ続けている自分を解放してあげることができたんだね。

ジャンが息子でないとなると、じゃあ本物の息子は…とほの暗い気持ちにならざるを得ないんだけどね…。そこに主題を置くと別のジャンルの映画になってしまうからさ…。

(序盤の流れがスリリングで作品として面白いので「フライトプラン」みたいな方向性であっても観たい気持ちはある)

 

個人的には、あの後二人はもう会わない気がする。

エレナは前に進むことができるようになったし、ジャンは若い。若すぎるんだよ…。

二人がいい感じになっても、年齢差よりどうしてもそれが気になってた。ジャンはこれから先に可能性を持ちすぎている。

どんなに純粋に彼女を想っていたとしても、きっと会わなければそれっきりなんだよ。しかしそれが健全で正しい。

 

演出がよくて、海と山の対比と波の表情が好きだった。漫画のコマの運びのような映像の作りも。

じめっとした空気がひたすら続くので具合のいい時に見るべき作品だけど、そういう意味で最後にあるのは前向きなメッセージなんだよね。スペインとフランスの合作ってのに超~~納得。

 

映画館で見る映画はいい。特に金曜夜は(大事なことなので2回)